複素解析によるゼータ関数の反射積分方程式の導出

 

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2019/04/07

[リスト]

公開日 2013/9/15

K. Sugiyama[1]

 

本論文では、逆メリン変換でゼータ関数の反射積分方程式を導出する。

 

導出方法の枠組み

エラー! 参照元が見つかりません。

 

多くの研究者が、リーマン予想の証明を試みてきたが、成功していない。このリーマン予想の証明は数学の重要な課題となっている。本論文では、リーマン予想を証明する準備として、複素解析で反射積分方程式の導出を試みる。

 

逆メリン変換より、ある母関数を得る。その母関数を指数倍し、その符号を反転することで、新しい母関数を得る。その母関数を逆Z変換し反射積分方程式を導出する。

 

反射積分方程式から、ファウルハーバーの公式を導出する。ゼータ関数のn階後退差分がゼータ関数ζ (n)となることを示す。

 

目次

1        序論.... 1

1.1         課題.... 1

1.2         課題の重要性.... 1

1.3         これまでの研究動向.... 1

1.4         本論文の新しい導出方法.... 1

2        既知の内容の確認.... 1

2.1         コーシーの留数定理.... 1

2.2         フレビッツのZ変換.... 1

2.3         メリン変換.... 1

2.4         オイラーのガンマ関数.... 1

2.5         オイラーのベータ関数.... 1

2.6         リーマンのゼータ関数.... 1

3        反射積分方程式の導出.... 1

4        結論.... 1

5        今後の課題.... 1

6        補足1: ファウルハーバーの公式の導出.... 1

6.1         既知の内容の確認 (その2). 1

6.1.1           ベルヌーイ多項式.... 1

6.1.2           ベルヌーイ数.... 1

6.1.3           フルヴィッツのゼータ関数.... 1

6.1.4           オイラー=マクローリンの和公式.... 1

6.1.5           漸近展開.... 1

6.1.6           ファウルハーバーの公式.... 1

6.2         ファウルハーバーの公式の導出.... 1

6.2.1           リーマンのゼータ関数の総和方程式の導出.... 1

6.2.2           フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式の導出.... 1

6.2.3           漸近展開の導出.... 1

6.2.4           ファウルハーバーの公式の導出.... 1

7        補足2: ゼータ関数の平均後退差分によるゼータ関数の表現.... 1

7.1         既知の内容の確認(その3). 1

7.1.1           ラマヌジャンの主定理.... 1

7.1.2           ウーンの連続的なベルヌーイ数.... 1

7.1.3           コーシーの積分公式.... 1

7.1.4           ネールント=ライス積分.... 1

7.1.5           ネールント=ライス積分(後退差分). 1

7.1.6           ポアソン=メリン=ニュートン循環.... 1

7.2         ゼータ関数の平均後退差分によるゼータ関数の表現.... 1

8        付録.... 1

8.1         Z変換表.... 1

9        参考文献.... 1

 

1       序論

1.1      課題

多くの研究者が、リーマン予想の証明を試みてきたが、成功していない。このリーマン予想の証明は数学の重要な課題となっている。本論文では、リーマン予想を証明する準備として、複素解析で反射積分方程式の導出を試みる。

 

1.2      課題の重要性

リーマン予想の証明は、数学における最も重要な未解決問題の一つである。

 

このため、多くの数学者がリーマン予想の証明を試みてきた。しかし、それらの試みは成功していない。リーマン予想を証明する方法の一つは、ゼータ関数の零点を、ある作用素の固有値と解釈することである。しかし、これまで、その作用素は見つかっていなかった。反射積分方程式は、この作用素のひとつと考えられる。このため、反射積分方程式の導出は重要な課題である。

1.3      これまでの研究動向

レオンハルト・オイラーは、1737年にゼータ関数の無限級数を導入した。ベルンハルト・リーマンは、1859年にゼータ関数の解析接続を導入した。

 

ダフィット・ヒルベルトとゲオルグ・ポリア[2]1914年頃に、ゼータ関数の零点は、ある作用素の固有値であろうと予想した。この予想はヒルベルト=ポリア予想と呼ばれている。

ゼエフ・ルドニックとピーター・サルナック[3]1996年にランダム行列理論で零点の分布を研究している。黒川重信氏は1996年頃より1元体[4]を研究している。アラン・コンヌ[5]1998年に非可換幾何学とリーマン予想の関係を示した。クリストファー・デニンガー[6]1998年に零点の固有値解釈を研究している。

1.4      本論文の新しい導出方法

逆メリン変換より、ある母関数を得る。その母関数を指数倍し、その符号を反転することで、新しい母関数を得る。その母関数を逆Z変換し反射積分方程式を導出する。

 

(反射積分方程式)

(1.1)

 

反射積分方程式から、ファウルハーバーの公式とネールント=ライス積分を導出する。

 

(ファウルハーバーの公式)

(1.2)

 

2       既知の内容の確認

本章では、既知の内容を確認する。

 

2.1      コーシーの留数定理

オーギュスタン=ルイ・コーシーは、1831年に留数定理[7]を発表した。

 

関数F (z)は単純閉曲線Dの内部の領域Dに孤立特異点cを持つほかは、領域Dの内部と周Dをこめて正則とする。このとき次の等式が成立する。

(留数定理)

(2.1)

関数F(z)が孤立特異点ckを持つ場合は、次の等式が成立する。

(留数定理)

(2.2)

 

2.2      フレビッツのZ変換

ビトルド・フレビッツ[8]1947年にZ変換を発表した。関数F(z)が領域D = {0<|z|<R}で正則ならば、その領域内で広義一様収束する級数に変換できる。

(Z変換)

(2.3)

(2.4)

(2.5)

 

したがって、原点Oと極iRの最小距離がRのとき、Z変換の領域Dは次のとおり。白丸は極である。

 

 

Z変換の領域

2-1: Z変換の領域

 

 

Z変換は、その領域Dを囲む積分経路Dの周回積分となる。

(Z変換)

(2.6)

(2.7)

 

2.3      メリン変換

ハジャルマー・メリン[9]は、1904年にメリン変換を発表した。

(メリン変換)

(2.8)

(2.9)

 

関数 f (s) が複素帯領域 S = {a < Re(s) < b} で正則で、 a b の間にある任意の実数 c に対し Im(s) ±∞ において f (s) 0 ならば、次の線積分は絶対収束する。

 

(逆メリン変換)

(2.10)

(2.11)

(2.12)

 

複素帯領域 S の実部は、被積分関数のすべての極の実部より大きい必要がある。複素帯領域 S を次の図に示す。白丸は極である。

 

メリン逆変換の複素帯領域S

2-2: 逆メリン変換の複素帯領域S

 

逆メリン変換を周回積分で次のように定義する。

(逆メリン変換)

(2.13)

(2.14)

 

積分経路Cは被積分関数のすべての極を囲む経路とする。例として積分経路 C = CI + CRを次のようにとる。白丸は極である。

 

 

メリン逆変換の積分経路

2-3: 逆メリン変換

 

積分経路CRの線積分が0ならば、積分経路Cの周回積分は積分経路CIの線積分に一致する。そのとき、次の式が成立する。

(2.15)

 

2.4      オイラーのガンマ関数

レオンハルト・オイラー[10]1729年に階乗の一般化としてガンマ関数を導入した。

(ガンマ関数)

(2.16)

変数x(qx)に置き換え、次の公式を得る。

(2.17)

上記の式で(dx)(qdx)に置き換えた。

 

 

ヘルマン・ハンケルは1863年に次の積分表示[11]を発表した。

 (ガンマ関数の周回積分)

(2.18)

 

ガンマ関数の積分経路は次の図の経路γである。

 

ガンマ関数の積分経路

2-4: ガンマ関数の積分経路

 

ガンマ関数は次の公式を持つ。

(ガンマ関数の反射公式)

(2.19)

 

上記の式は、オイラーの反射公式、相半公式、相反公式、相補公式とも呼ばれている。

 

2.5      オイラーのベータ関数

レオンハルト・オイラーは、1768年に彼の著書[12]でベータ関数を導入した。

(ベータ関数)

(2.20)

 

ガンマ関数の反射公式により、ベータ関数の反射公式を得る。

(ベータ関数の反射公式)

(2.21)

 

 

2.6      リーマンのゼータ関数

レオンハルト・オイラーは、1737年にゼータ関数の無限級数を導入した。

(ゼータ関数)

(2.22)

 

ベルンハルト・リーマン[13]は、1859年にゼータ関数をガンマ関数で表現した。

(ゼータ関数)

(2.23)

 

上記の式を次のメリン変換と解釈する。

(ゼータ関数のメリン変換)

(2.24)

(2.25)

(2.26)

(2.27)

 

その関数の逆メリン変換は次のとおりである。

(ゼータ関数の逆メリン変換)

(2.28)

(2.29)

(2.30)

(2.31)

 

ベルンハルト・リーマンは、1859年にゼータ関数の解析接続を導入した。

(ゼータ関数の解析接続)

(2.32)

 

上記の式を、式(2.7)のような逆Z変換と解釈する。

(ゼータ関数の逆Z変換)

(2.33)

(2.34)

(2.35)

(2.36)

 

積分経路γを次の図に示す。白丸は極を意味する。

ゼータ関数の積分経路

2-5: ゼータ関数の積分経路

 

ゼータ関数のZ変換は次のとおり。

(Z変換)

(2.37)

(2.38)

(2.39)

(2.40)

 

メリン変換とZ変換の母関数は次の関係を持つ。

(2.41)

(2.42)

 

リーマンは次の公式を示した。

(リーマンの反射公式)

(2.43)

 

リーマンは1859年に次の予想を提唱した。

(リーマン予想)

非自明な零点の実数部はすべて1/2である。

 

自明でない零点ρ1ρ2の例を次の図に示す。黒丸が零点、白丸は極である。

 

ゼータ関数の自明でない零点

2-6: ゼータ関数の自明でない零点

(2.44)

(2.45)

 

このリーマン予想の証明は、未解決であり、重要な課題となっている。

 

3       反射積分方程式の導出

本章では、次の積分方程式を証明する。

(ゼータ関数の積分方程式)

(3.1)

証明

 

導出方法の枠組みは次のとおり。

 

導出方法の枠組み

3-1: ゼータ関数の積分方程式導出の枠組み

一方、ガンマ関数は次の通り。

(3.2)

変数zkzに置き換えdzkdzに置き換える。

(3.3)

両辺について、k = 1から無限大までの和を取る。

(3.4)

左辺を次のゼータ関数で置き換える。

(3.5)

その結果、次の式を得る。

(3.6)

右辺の和と積分の順序を入れ替える。

(3.7)

ここで次の等比級数の公式を用いる。

(3.8)

その結果、次の式を得る。

(3.9)

上記の式は次のようなメリン変換と解釈できる。

(3.10)

したがって、次のような逆メリン変換が可能である。

(3.11)

その結果、次の式を得る。

(3.12)

逆メリン変換では、積分経路Cは被積分関数のすべての極を囲む必要がある。そこで積分経路Cを次のように取る。白丸は極である。

メリン逆変換の積分経路

3-2: 逆メリン変換の積分経路

ここで、ベルヌーイ数は次の通り。

(3.13)

一方、ゼータ関数とベルヌーイ数には次の関係がある。

(3.14)

上記の式を式(3.13)に代入する。

(3.15)

階乗をガンマ関数に置き換え、変形する。

(3.16)

n1nに置き換える。

(3.17)

2以上の自然数nに対し次の値は0になる。

(3.18)

そのため、式(3.19)は次のように和を取る範囲を無限大まで延長できる。

(3.19)

上記の式は次のようなZ変換と解釈できる。

(3.20)

したがって、次のような逆Z変換が可能である。

(3.21)

その結果、次の式を得る。

(3.22)

積分経路 γ は次の図のとおり。白丸は極を意味する。

 

ゼータ関数の積分経路

3-3: ゼータ関数の積分経路

 

s1sに置き換える。

(3.23)

ここで次の式を用いる。

(3.24)

その結果、次の式を得る。

(3.25)

上記の式に、次の式(3.12)を代入する。

(3.12)

その結果、次の式を得る。

(3.26)

変形する。

(3.27)

一方、ガンマ関数にはハンケルの積分表示がある。下記式を上記の式に代入する。

(3.28)

その結果、次の式を得る。

(3.29)

次のベータ関数を使い、整理する。

(3.30)

この結果、次の式を得る。

(3.31)

上記が求めたい積分方程式だった。(証明終了)

 

4       結論

本論文では、次の結果を得た。

・ゼータ関数の反射積分方程式を導出した。

5       今後の課題

今後の課題は次のとおり。

 

・ファウルハーバーの公式を導出する。

・ネールント=ライス積分を導出する。

・反射積分方程式の固有値を調べる。

 

6       補足1: ファウルハーバーの公式の導出

補足では、既知の内容を確認後、次の式を導出する。

 

・ファウルハーバーの公式

 

6.1      既知の内容の確認 (その2)

本節では、既知の内容を確認する。

6.1.1     ベルヌーイ多項式

ベルヌーイ多項式を次のように定義する。

(ベルヌーイ多項式)

(6.1)

 

上記の級数は全領域で収束しない。原点と母関数の極の最小距離がのため、収束半径はである。

 

ベルヌーイ多項式の級数の収束半径

6-1: ベルヌーイ多項式の級数の収束半径

 

6.1.2     ベルヌーイ数

ヤコブ・ベルヌーイは1713年に彼の著書[14]で、ベルヌーイ数を導入した。

(ベルヌーイ数)

(6.2)

 

正の偶数 n に対し、次の公式が成立する。

(ベルヌーイ数の反射公式)

(6.3)

ヴィーフの著書[15]によれば、次のZ変換が存在する。

(ベルヌーイ数のZ変換)

(6.4)

 

本論文では、次のZ変換を使用する。

(ベルヌーイ数のZ変換)

(6.5)

(6.6)

(6.7)

(6.8)

一方、ゼータ関数のZ変換は次の通り。

(ゼータ関数のZ変換)

(6.9)

(6.10)

(6.11)

(6.12)

したがって、次の式が成立する。

(6.13)

変数sを負の整数-nに置換し、次の公式を得る。

(ベルヌーイ数の公式)

(6.14)

従来、ベルヌーイ数は離散的であると考えられてきた。私は、ベルヌーイ数は連続的であると考える。連続的なベルヌーイ数をベルヌーイ関数と呼ぶ。私はベルヌーイ関数をゼータ関数の次のような異なる表現と解釈する。

(6.15)

 

 

6.1.3     フルヴィッツのゼータ関数

アドルフ・フルヴィッツ[16]1882年に、次のゼータ関数を導入した。

(フルヴィッツのゼータ関数)

(6.16)

 

フルヴィッツのゼータ関数とリーマンのゼータ関数の関係を次に示す。

(6.17)

(6.18)

フルヴィッツのゼータ関数はq 1に等しいとき、リーマンのゼータ関数となる。

(6.19)

フルヴィッツのゼータ関数をガンマ関数で表現する。

(フルヴィッツのゼータ関数)

(6.20)

 

上記の式を次のメリン変換と解釈する。

(メリン変換)

(6.21)

(6.22)

(6.23)

(6.24)

フルヴィッツのゼータ関数の解析接続は次の通り。

(フルヴィッツのゼータ関数の解析接続)

(6.25)

 

上記の式を、次の逆Z変換と解釈する。

(Z変換)

(6.26)

(6.27)

(6.28)

(6.29)

自然数nに対し、次の等式が成立する。

(ベルヌーイ多項式の公式)

(6.30)

 

6.1.4     オイラー=マクローリンの和公式

オイラー[17]1738年に次の公式を発見した。マクローリン[18]1742年に、オイラーとは独立に同式を発見している。

(オイラー=マクローリンの和公式)

(6.31)

(6.32)

(6.33)

上記の式において、変数Rは誤差項である。

 

6.1.5     漸近展開

オイラー[19]1755年にオイラー=マクローリンの和公式でゼータ関数の値を計算している。

(ゼータ関数の漸近展開)

(6.34)

上記の式において変数Rは誤差項である。導出方法の詳細は、エドワーズ[20]1974年の著書にある。

 

ここで次の等式を用いる。

(6.35)

 

その結果、次の式を得る。

(ゼータ関数の漸近展開)

(6.36)

 

6.1.6     ファウルハーバーの公式

ヨハン・ファウルハーバー[21]1631年にべき乗和の公式を提示した。自然数nに対し次の公式が成立する。

(ファウルハーバーの公式)

(6.37)

 

上記の式をベルヌーイ多項式Bk(1)で表現する。

(ファウルハーバーの公式)

(6.38)

本論文では、上記の式をベルヌーイ数Bkで次のように表現する。

(ファウルハーバーの公式)

(6.39)

 

6.2      ファウルハーバーの公式の導出

 

ファウルハーバーの公式を導出するため、次の公式を導出する。

- リーマンのゼータ関数の総和方程式

- フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式

- リーマンのゼータ関数の漸近展開

 

6.2.1     リーマンのゼータ関数の総和方程式の導出

リーマンのゼータ関数の総和方程式を導出する。

 

反射積分方程式は次のとおり。

(反射積分方程式)

(6.40)

 

上記の式において、変数 s (1-s) に置き換え、変数 t (1-t) に置き換える。

(反射積分方程式)

(6.41)

 

積分経路 C0 を次の図に示す。白丸は極である。

ゼータ関数の周回積分方程式の積分経路

6-2:反射積分方程式の積分経路

 

 

上記の式に次の式を代入する。

(ベータ関数の反射公式)

(6.42)

 

その結果、次の式を得る。

(6.43)

 

上記の式を留数定理で積分する。

(6.44)

ここで、 ck k 番目の特異点である。特異点は 0, 1, 2, 4, 6, … である。

 

整数 n に対し次の等式が成り立つ。

(6.45)

すべての特異点は整数であり、ゼータ関数 ζ (1-t) の値は t = 3, 5, 7, … で零であるため、次のように書ける。

 

(総和方程式)

(6.46)

上記の式は発散するため、計算できない。この問題を解決するため、次の節で、フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式を導出する。

 

6.2.2     フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式の導出

この節では、フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式を導出する。

 

フルヴィッツのゼータ関数は次の通り。

(フルヴィッツのゼータ関数)

(6.47)

上記の式をメリン変換の母関数で次のように表現する。

(6.48)

上記の式は次のように変形できる。

(6.49)

上記の式の関数H(x)にゼータ関数のZ変換を代入すると下記となる。

(6.50)

(6.51)

そのZ変換は領域Dで収束する。したがって、その領域で、積分と総和の順序を変更できる。

 

変数 x について積分するため、次のように式を整理する。

(6.52)

この式に、次のガンマ関数の等式(2.17)を適用する。

(6.53)

その結果、次の式が得られる。

(6.54)

ここで、次のベータ関数(2.20)を利用して式を簡略化する。

(6.55)

すると下記式となる。

(フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式)

(6.56)

「ベルヌーイ関数の級数定義式」は収束半径が2πのため、上記の式は発散する。そのため、総和の上限値を変数qに依存する変数rに変更する。

(フルヴィッツのゼータ関数の総和方程式)

(6.57)

ここでRは誤差項である。

 

6.2.3     漸近展開の導出

本節ではゼータ関数の漸近展開(6.36)を導出する。

 

リーマンとフルヴィッツのゼータ関数の関係は次の通り。

(6.58)

 

したがって、リーマンのゼータ関数の総和方程式は次のように表現できる。

(総和方程式)

(6.59)

 

ベータ関数をガンマ関数に置き換えると下記式を得る。

(6.60)

ベルヌーイ多項式の等式により次のように変形する。

(6.61)

上記の式を変形し、ゼータ関数の漸近展開を得る。

(ゼータ関数の漸近展開)

(6.62)

 

6.2.4     ファウルハーバーの公式の導出

本節ではファウルハーバーの公式を導出する。

 

ゼータ関数の漸近展開(6.36)は次の通り。

(ゼータ関数の漸近展開)

(6.63)

 

上記の式において、変数s(-n)に置き換える。

(6.64)

上記の式に、オイラーの反射公式を適用し次の式を得る。

(6.65)

整数kに対し次の等式が成り立つ。

(6.66)

したがって、次の式を得る。

(6.67)

自然数n、整数k > n+1に対し次の式が成立する。

(6.68)

したがって、次の式が成立する。

(6.69)

k > n+1の項の値がすべてゼロであるため、誤差項Rを消し、式(6.67)の総和の上限をn+1に変更する。

(6.70)

上記の式を階乗記号で次のように表現する。

(6.71)

二項係数で次のように表現する。

(6.72)

ベルヌーイ多項式の等式により次のように変形する。

(6.73)

 

自然数n、整数k = n+1に対し次の式が成立する。

(6.74)

その結果、次の式が成立する。

(6.75)

 

したがって、式(6.73)を次のように変形し、ファウルハーバーの公式を得る。

(ファウルハーバーの公式)

(6.76)

上記の式が、本節で導出したい式であった。

 

 

7       補足2: ゼータ関数の平均後退差分によるゼータ関数の表現

7.1      既知の内容の確認(その3)

本節では、既知の内容を確認する。

7.1.1     ラマヌジャンの主定理

シュリニヴァーサ・ラマヌジャンは1910年ごろに実数xと複素数sに対し次の定理を得た[22]

(ラマヌジャンの主定理)

(7.1)

(7.2)

 

上記の式は次のベルヌーイ数とゼータ関数で成立する。

(7.3)

(7.4)

(7.5)

 

この定理は次の関係式を示唆している。

(7.6)

 

7.1.2     ウーンの連続的なベルヌーイ数

ウーン[23]1997年に、連続的なベルヌーイ数を導入した。

 

自然数nに対し、次の公式が成立する。

(ベルヌーイ数の公式)

(7.7)

 

ウーンは複素数sに対し次の等式を提案した。

(ベルヌーイ関数の等式)

(7.8)

 

本論文では、ベルヌーイ数の従来の表記法に基づき、ベルヌーイ関数に対し次の表記法を用いる。

(ベルヌーイ関数の等式)

(7.9)

 

上記の式をリーマンの反射公式に代入し、次の式を得る。

(7.10)

上記の式を変形することで次の式を得る。

(ベルヌーイ関数の反射公式)

(7.11)

上記の式は正の偶数 s に対し、下記式となる。

(7.12)

上記の式は、正の偶数 n に対する次の式と等しい。

(ベルヌーイ数の反射公式)

(7.13)

 

上記の結果は、ベルヌーイ関数の等式の妥当性を示唆する。

 

 

7.1.3     コーシーの積分公式

微分は次のように定義される。

(714)

2階微分は次のように定義される。

(715)

n階微分は次のように定義される。

(716)

ここで、 は二項係数である。

(717)

関数F(z)が経路C内で正則の場合、n階微分はコーシーの積分公式で表現できる。

(コーシーの積分公式)

(718)

関数F(z)が経路C内で正則でない場合、n階微分はコーシーの積分公式で表現できない。関数F(z)を経路Cで平均した関数f(z)の微分が得られる。平均化した微分であるため、新しい記号で表現する。

(コーシーの平均微分公式)

(719)

 

 

7.1.4     ネールント=ライス積分

前進差分は次のように定義される。

(720)

2階前進差分は次のように定義される。

(721)

n階前進差分は次のように定義される。

(722)

正則の場合、n階前進差分はネールント=ライス積分で表現できる。

(ネールント=ライス積分)

(723)

ここで (zx)n+1は下降階乗である。

(724)

ネールント=ライス積分はニールス・エリク・ネールントが1924年にを発表した[24]

 

関数F(z)が経路C内で正則でない場合、n階前進差分はネールント=ライス積分(7‑23)で表現できない。関数F(z)を経路Cで平均した関数の差分が得られる。平均化した前進差分であるため、新しい記号で表現する。

(ネールント=ライス平均前進差分公式)

(725)

x=0とし、階乗と下降階乗をガンマ関数で表現する。

(726)

ガンマ関数の反射公式より次の式が成り立つ。

(727)

(728)

したがって式(7‑27)を式(7‑28)で割ることにより、次の式が成り立つ。

(729)

ここで、次の式が成り立つ。

(730)

したがって、式(7‑29)は次のようになる。

(731)

したがって、式(7‑26)は次のようになる。

(732)

ガンマ関数をベータ関数で表現する。

(ネールント=ライス平均前進差分公式)

(733)

 

 

7.1.5     ネールント=ライス積分(後退差分)

後退差分は次のように定義される。

(734)

2階後退差分は次のように定義される。

(735)

n階後退差分は次のように定義される。

(736)

関数F(z)が経路C内で正則の場合、n階後退差分はネールント=ライス積分で表現できる。

(ネールント=ライス積分)

(737)

ここで (zx)n+1は下降階乗である。

(738)

関数F(z)が経路C内で正則でない場合、n階後退差分はネールント=ライス積分(7‑37)で表現できない。関数F(z)を経路Cで平均した関数f(z)の差分が得られる。平均化した後退差分であるため、新しい記号で表現する。

 

(ネールント=ライス平均後退差分公式)

(739)

ここでx=0とし階乗と下降階乗をガンマ関数で表現する。

(740)

 

ガンマ関数の反射公式より次の式が成り立つ。

(741)

(742)

したがって式(7‑41)を式(7‑42)で割ることにより、次の式が成り立つ。

(743)

ここで、次の式が成り立つ。

(744)

したがって、式(7‑43)はつぎのようになる。

(745)

したがって、式(7‑40)はつぎのようになる。

(746)

ガンマ関数をベータ関数で表現する。

(ネールント=ライス平均後退差分公式)

(747)

z-zに置き換える。

(ネールント=ライス平均後退差分公式)

(748)

 

7.1.6     ポアソン=メリン=ニュートン循環

ネールント=ライス積分に関連し、フラジョレットは1985年にポアソン=メリン=ニュートン循環を発表した[25]

(ポアソン=メリン=ニュートン循環)

(7.49)

(7.50)

(7.51)

 

 

ポアソン-メリン-ニュートン サイクル

7-1: ポアソン=メリン=ニュートン循環

 

 

7.2      ゼータ関数の平均後退差分によるゼータ関数の表現

ゼータ関数の平均後退差分はゼータ関数と等しい。

(752)

証明

ゼータ関数の反射積分方程式より下記が成立する。

(753)

両辺に-1をかけ、複素数1sを-nとする。

(754)

上記の式(7‑54)の右辺をネールント=ライス平均後退差分公式(7‑48)の右辺と比較し次の式を得る。

(755)

上記が求めたい式であった。(証明終了)

 

ゼータ関数では平均後退差分は、通常の後退差分で次のように表現できる。

(756)

 

 

ネールント=ライス積分は前進差分でも定義可能だが、前進差分では上記のようにゼータ関数を簡潔に表現できない。計算過程を省略し結果だけを記すと下記となる。

(757)

(758)

ここで、は平均前進差分であり、は通常の前進差分である。

 

8       付録

8.1      Z変換表

Z変換表は次のとおり。

81:Z変換表

#

番号

1

(8.1)

2

(8.2)

3

(8.3)

4

(8.4)

 

上記の関数は次のとおり。

(リーマンのゼータ関数)

(8.5)

(ディリクレ[26]のイータ関数)

(8.6)

(フルヴィッツのゼータ関数)

(8.7)

(フルヴィッツのイータ関数)

(8.8)

 

多項式の公式は次のとおり。

(8.9)

(8.10)

(8.11)

(8.12)

 

 

 

多項式の定義は次のとおり。

(ベルヌーイ多項式)

(8.13)

(オイラー多項式)

(8.14)

 

9       参考文献



[1] Mail: sugiyama_xs@yahoo.co.jp

[2] Andres Odlyzko, “Correspondence about the origins of the Hilbert-Polya Conjecture”, (1981).

[3] Zeev Rudnick; Peter Sarnak, “Zeros of Principal L-functions and Random Matrix Theory”, Duke Journal of Mathematics 81 (1996): 269-322.

[4] Yu. I. Manin, “Lectures on zeta functions and motives (according to Deninger and Kurokawa)”, Ast ́erisque No. 228 (1995), 4, 121-163.

[5] Alain Connes, “Trace formula in noncommutative geometry and the zeros of the Riemann zeta function” (1998), http://arxiv.org/abs/math/9811068.

[6] C. Deninger, “Some analogies between number theory and dynamical systems on foliated spaces”, Doc. Math. J. DMV. Extra Volume ICMI (1998), 23-46.

[7] Augustin-Louis Cauchy, “Mémoire sur les rapports qui existent entre le calcul des Résidus et le calcul des Limites, et sur les avantages qu'offrent ces deux calculs dans la résolution des équations algébriques ou transcendantes (Memorandum on the connections that exist between the residue calculus and the limit calculus, and on the advantages that these two calculi offer in solving algebraic and transcendental equations)”, presented to the Academy of Sciences of Turin, November 27, (1831).

[8] Witold Hurewicz, “Filters and Servo Systems with Pulsed Data”, in Theory of Servomechanics. McGraw-Hill (1947).

[9] Hjalmar Mellin, “Die Dirichlet'schen Reihen, die zahlentheoretischen Funktionen und die unendlichen Produkte von endlichem Geschlecht”, Acta Math. 28 (1904), 37-64.

[10] Leonhard Euler, Euler's letter to Goldbach 15 October (1729) (OO715).

[11] Hermann Hankel, “Die Euler'schen integrale bei unbeschränkter Variabilität der Arguments”, Zeitschrift fur Math. und Physik 9 (1863) 1-21.

[12] Leonhard Euler, E342 - “Institutionum calculi integralis volumen primum (Foundations of Integral Calculus, volume 1)”, First Section, De integratione formularum differentialum, Chapter 9, De evolutione integralium per producta infinita. (1768).

[13] Bernhard Riemann, “Über die Anzahl der Primzahlen unter einer gegebenen Grösse (On the Number of Primes Less Than a Given Magnitude)”, Monatsberichte der Berliner Akademie, 671-680 (1859).

[14] Jakob Bernoulli, “Ars Conjectandi (The Art of Conjecturing)” (1713).

[15] R. Vich, “Z-transform Theory and Applications”, D. Reidel Publishing Company, (1987).

[16] Adolf Hurwitz, Zeitschrift fur Mathematik und Physik vol. 27 (1882) p. 95.

[17] Leonhard Euler, Comment. Acad. Sci. Imp. Petrop. , 6 (1738) pp. 68-97.

[18] Colin Maclaurin, "A treatise of fluxions", 1-2, Edinburgh (1742).

[19] Leonhard Euler, E212 - “Institutiones calculi differentialis cum eius usu in analysi finitorum ac doctrina serierum” (Foundations of Differential Calculus, with Applications to Finite Analysis and Series), Part II, Chapter 6: De summatione progressionum per series infinitas. (1755).

[20] H. M. Edwards, “Riemann’s Zeta Function”, Academic Press, (1974).

[21] Johann Faulhaber, “Academia Algebrae - Darinnen die miraculosische Inventiones zu den höchsten Cossen weiters continuirt und profitiert warden” (1631).

[22] B. C. Berndt, “Ramanujan's Notebooks: Part I”, New York: Springer-Verlag, p. 298, (1985).

[23] S. C. Woon, “Analytic Continuation of Bernoulli Numbers, a New Formula for the Riemann Zeta Function, and the Phenomenon of Scattering of Zeros” (1997), http://arxiv.org/abs/physics/9705021

[24] Niels Erik Nörlund, “Vorlesungen uber Differenzenrechnung”, Teubner, Leipzig and Berlin, (1924).

[25] Philippe Flajolet, Mireille Regnier, and Robert Sedgewick, “Some uses of the Mellin integral transform in the analysis of algorithms”, Combinatorics on Words, NATO AS1 Series F, Vol. 12 (Springer, Berlin, 1985).

[26] Dirichlet, P. G. L., “Beweis des Satzes, dass jede unbegrenzte arithmetische Progression, deren erstes Glied und Differenz ganze Zahlen ohne gemeinschaftlichen Factor sind, unendlich viele Primzahlen enthält”, Abhand. Ak. Wiss. Berlin 48 (1837).


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